本で科学の魅力を伝えるプロジェクトを企画・制作・運営
2017年、理化学研究所では創立100周年を機にブランディング事業を行いました。「科学道100冊」プロジェクトはこれに付随するかたちでスタート。編集工学研究所は同プロジェクトのコンセプト設計〜運営までを包括的にサポートをしています。選書ラインアップのユニークさ、本棚を飾るポップアップツールのデザイン性が高く評価され、毎年、全国の図書館や書店で「科学道100冊」フェアが開催されています。2020年にはグッドデザイン賞を受賞しました。
プロジェクトの背景
「科学道100冊」は、理化学研究所さま(以下、理研さま)が100周年を記念に行ったブランディング事業に付随するプロジェクトとして立ち上がりました。理研さまは自然科学分野における日本で唯一の総合研究所です。“科学立国”日本を担う存在として、幅広い年齢層に向けた科学への興味喚起策の展開は理研さまにとって常に大きな課題でした。
実施内容
コンセプト設計からブックレットの制作、書店や図書館フェアのサポートまで
本プロジェクトは大きく3つのステップを踏んで成長してきました。当初は「科学道」という理研さまのブランドコンセプトの策定、次に「科学道100冊」プロジェクトの立ち上げ、そして「科学道100冊」の恒例行事化です。
Phase1:「科学道」のコンセプト策定(2016年〜2017年)
「理研はいつの時代も科学の力を信じて未知を切り拓いてきた」という意味を込め、また、これからの100年を目指す意味も込めて「科学道」というコンセプトを策定。プロジェクト開始当初は、理研さまのインナーブランディング施策として、所内の研究者や職員の方々に配布するパンフレットを制作しました。
Phase2:科学×本のプロジェクト「科学道100冊」を始動(2017年〜2018年3月)
「科学道」というコンセプトを多くの人に知ってもらうため、科学者の姿勢を100冊の本で表現する「科学道100冊」プロジェクトを立ち上げました。選書だけではなく、ブックレットや書店/図書館での展開ツールも制作。図書館流通センター(TRC)などとパートナーシップを組み、全国の学校、図書館、書店に「科学道100冊」の特設棚を作ってもらう仕組みも構築しました。
◎「科学道100冊」(2017年2月~2018年3月)
科学者の思考を大きく6つのステップに分け、それぞれのステップに関連する本を選びました(【「科学道100冊」開催実績】全国428カ所(教育機関89校、図書館193館、書店146店舗))。
◎「科学道100冊ジュニア」(2017年10月~2018年3月)
2017年秋には、幼児〜小学生向けの「科学道100冊ジュニア」を発表。子どもたちの好奇心をくすぐるために絵本や児童書も選書しました(【「科学道100冊ジュニア」開催実績】全国757カ所(教育機関138校、図書館251館、書店368店舗))。
Phase3:「科学道100冊」を毎年恒例のブックフェアに育てる(2019年〜)
出版、教育業界からの支持を受け、2019年からは毎年恒例のブックフェアとして展開するようになりました。それに合わせ、選書のプロセスと選書内容の構成を一部、変更しました。
▼選書プロセス:理研さまの全職員を対象にアンケートで「大人になる前に出合ってほしい科学道の本」をヒアリング、事務局で科学教育/啓蒙の観点から見た必読書候補を選定し、選書委員会(理研さまと編集工学研究所で構成)が決定するというプロセスを構築しました。
▼100冊の構成:「科学道100冊」のラインアップ構成を、(1)「旬のトピック」など3つの軸で選んだ「テーマ本」(50冊)と、(2)時代を経ても古びない良書として選んだ「科学道クラシックス」(50冊)の2部構成に仕立て直しました。「テーマ本」のラインアップは毎年変わります。
◎「科学道100冊2019」(2019年9月~2020年3月)
「科学道100冊2019年」のテーマは「元素ハンター」「美しき数学」「科学する女性」でした(【「科学道100冊2019」開催実績】全国447ヶ所(教育機関194校、図書館211館、書店33店舗))。
◎「科学道100冊2020」(2020年9月〜2021年3月)
2020年のテーマは「驚異のカラダ」「宇宙フロンティア」「世界を変えた科学者」でした。
アウトプットと成果
(1)ブックレット制作
「科学道100冊」を紹介するブックレットを制作しました。科学者の方々へのインタビューを通じて、「科学道100冊」に選ばれた本の魅力をお伝えしています。
(2)教育機関や図書館、書店でのブックフェア展開支援
毎年約500ヵ所の教育機関や図書館、書店でブックフェアが開催されています。事務局からは本棚を飾るためのポップやブックレットをセットでお送りしています。
(3)書棚ツールの制作
書棚を演出するための各種ポップ等を制作しました。
(4)キャラクター制作
「科学道100冊」のオリジナルキャラクターを開発、本プロジェクトへの親しみやすさを演出しました。この博士のキャラクターは「科学道100冊」の広報役として現在も活躍中です。
(5)公式Webサイトの制作
「科学道100冊」の公式Webサイトを制作しました。毎年更新される「科学道100冊」の選書ラインアップを閲覧できるほか、ブックフェアの申し込みなども受け付けています。「科学☓本」の情報を発信するメディアとして、随時、情報発信も行っています。
(6)中学・高校向け教育プログラムの開発
教育機関と連携し、「科学道100冊」を活用した「探究型読書」プログラム(全12コマ)を開発しました。
(7)「科学道100冊」関連イベントの企画・運営
ワークショップやトークイベントなどを企画。子ども連れの家族や学生のみなさんなど幅広い層の方々に科学の面白さ、すごさをお伝えしました。
スタッフ
▼編集工学研究所
PM/ディレクション/編集:仁禮洋子
Webディレクション/事務局運営:伊藤有希
撮影/制作ディレクション:小森康仁
進行管理:衣笠純子
プランニング:安藤昭子
▼パートナー
デザイン:佐伯亮介
イラスト:くにともゆかり
Web制作:YOHAKU
お問い合わせ
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