Season 1 第2講
ウイルスと文明のあいだを考える
11月14日(土)
コロナ禍にスタートを切ったHyper-Editing Platform [AIDA]シーズン1。第2講のテーマはウイルスだ。
『感染症の世界史』の著者である石弘之氏をゲストに招き、ウイルスと人類、地球と文明のあいだを鳥瞰する。
ウイルスは生物ではなく、生物モドキなのである。
生物モドキであるウイルスは、しかしながら生物の細胞を利用して自己複製をする。
つまり増殖できる。他動的なのだ。
―松岡正剛 千夜千冊1655夜『感染症の世界史」21世紀は再生の時代にしたい。
―石弘之『環境再考史』
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1万分の1ミリのウイルスが、地球上の2億人に感染し、450万人の命を奪った。ウイルスは人類の天敵なのか? 天敵は排除すべきなのか? 世界的パンデミックの背景には何があるのか? ウイルスとの共生と言われるが、それはどういうことなのか?
生物は古来ウイルスによって命をつなぎ、時にウイルスによって侵されてきた。「ウイルスは生物か非生物か」が問題ではなく、生命とウイルスの定義そのものを変える必要がある、と石氏は語る。環境ジャーナリストとして世界80箇所を渡り歩いた石氏と、古今東西・森羅万象の知の編集に身を投じてきた松岡座長。ふたりの「好奇心ジャンキー」が繰り広げるセッションから、「生命」と「文明」の奇妙な関係が浮き上がる。
プログラム
13:00〜 オープニング
13:50〜 石弘之 ソロ講義「コロナウイルスはどこから来てどこへ行くのか」
15:25〜 編集工学レクチャー
16:50〜 石弘之 × 松岡正剛 対談セッション「生命の定義を考えるー「連続的なるもの」の生命論」(note掲載)
17:55〜 AIDAセッション(全員参加)「ウイルスと地球と人間社会」
当日は石弘之氏の教え子の山下英俊氏(一橋大学 大学院経済学研究科准教授)やボードメンバーの田中優子氏も参加した。
▼対談セッションのレポート記事はこちら
石弘之 × 松岡正剛 対談セッション「生命の定義を考えるー「連続的なるもの」の生命論」(note掲載)
講義の本棚「ウイルスと文明を考える7冊」
ライブセッションで交わされた議論から、より思索を深めるための参考書籍を、運営チームがピックアップ。
今回は「ウイルスと文明のあいだ」を分け入っていくための手すりになる7冊を紹介。
『感染症の世界史』石弘之(角川ソフィア文庫)/『感染症の日本史』磯田道史(文春新書)
『ウイルスの世紀』山内一也(みすず書房)/『生物はウイルスが進化させた』武村政春(講談社ブルーバックス)
『鉄条網の世界史』石弘之(角川ソフィア文庫)/『環境再興史』石弘之(角川新書)/『砂戦争』石弘之(角川新書)
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新型コロナウイルスはたしかに怖い。今後、さらに凶暴なウイルス、厄介なウイルスが登場する可能性もあるだろう。しかしだからといって、地球からウイルスがなくなればよいわけではない。なぜなら、ウイルスは進化に欠かせない生物の相棒であり、「地球生態系になくてはならない恩人たち」でもあるからだ。新型コロナウイルスともほかのウイルスとも、共生するほかに選択肢はないのだ。
私たちはいま、ウイルスと人間のあいだを再考するタイミングを迎えている。共生といえば、地球を壊さないために環境を再興し、ウイルス以外の多様な生物とも共生を模索する必要がある。それを妨げる要因の一つが、文明や国の争いだ。資源の奪い合いや境界線を巡る戦争は、共生とは対極にあるがいっこうに収まる様子はない。このまま放っておけば、文明はいずれ自然環境や人間環境を致命的に破壊するだろう。私たちにいま求められているのは、文明と地球のあいだの再編集でもある。