会社も社会も、読書で変わる?初開催の「ほんのれん越境イベント」に、メーカー、通信、美容など12機関が参加。
編集工学研究所と丸善雄松堂が提供する更新型一畳ライブラリー「ほんのれん」は、「問い」と「本」を介して場に創発を促すコミュニケーション・ハブ装置です。2024年9月6日に、ほんのれんを導入された方や導入検討中の方々が混ざり合い、ワークショップをしながら多様な交わし合いを行う「ほんのれん越境イベント」が開催されました。
企業はメーカーやコンサルティング、スキンケアブランド、教育機関は大学、中・高等学校と様々な領域の12機関からお集まりいただき、現役大学生から経営層の方まで、多様な属性の方が一堂に会しました。日々感じられている「ほんのれん」導入の手応えから、本がビジネスにもたらす可能性、学校教育の未来まで、活発な意見・アイデアが交わされたイベントの様子をご紹介します。
問いと本を使った「共読」ワークショップを体験
冒頭、ほんのれん編集長の仁禮(にれ)が挨拶のなかで、ある言葉を引用しました。それは、「読書とは本来、つねに社会変革の風を孕むものだ」というもの。去る8月12日に逝去した編集工学研究所所長、松岡正剛の言葉です。
「ほんのれんは、松岡正剛も重視した『共読』という読書法を取り入れて実践しています。人が集まって読みを交わし合うことの面白さや可能性を、ぜひ体験して持ち帰っていただきたいです。」とメッセージを送りました。
イベントでは、職種の異なる初対面同士の4~5名が1グループとなり、問いと本を使った共読ワークショップ「ほんのれん旬会」を体験。「ホントの自分?」「なぜ旅をするのか?」「スマホ中毒?」などグループごとに異なる問いについて、関連する旬感本5冊を手分けして読み合い、気づきを交わします。
⇒「ほんのれん旬会」についてはこちらもご参照ください。
問いと本の行き来で、高速に対話と思考を深める
「ホントの自分?という問いを考えたら、ホントって本当にあるのかなと思えてきた」「この本は、一貫性ある『個人』じゃなくて、相手によって色々な自分を使い分ける『分人』でいいんじゃないと言っている」「似たことはこちらの本にも書いてあって…」
問いから本へ、本から本へ。互いの読みを共有する中で、初対面でもあっという間に対話が進み、短時間で思いがけない気づきや新たな問いに出会っていきます。グループ発表に、それぞれの旬会の充実ぶりが覗えました。
「「ホントの自分?」をめぐる5冊の旬感本を読み合わせていくと、確立されたひとつの自己などない、ということが見えてきた。本当の自分という問い自体が、近代的なのではないだろうか」(「ホントの自分?」担当グループ)
「スマホ中毒?という問には人間拡張or人間縮小というサブタイトルがある。スマホを考えることがそのまま、人間のあり方を考えることなのだと気がづいた」(「スマホ中毒?」担当グループ)
「どこからが旅?という問いで盛り上がった。近くのコンビニまで行くことだって旅だという人も。一方で、生まれてから死ぬまでを旅とみれば、これは哲学にもなる。コンビニから死生観まで、話が広がった」(「なぜ旅をするのか?」担当グループ)
テーマの奥深くまで高速に思考が進むのは、多様な読みを同時に重ねる「ほんのれん旬会」ならでは。この「共読」という方法に手応えを感じる声も多く寄せられました。
「見ず知らずの間柄でも、本を介してこんなふうにコミュニケーションを取れるのかと驚きました」(株式会社サンゲツ 人事部/栗野さま)
「「ホントの自分?」という問いを担当したこともあり、グループワークを通して、「私」という存在は、そもそも集団のなかで存在するものなのだと気づけました」(大阪経済大学 経済学部経済学科 2年生 村上旅途さん)
「問いに対して一見関係ないような本同士でも、互いに読み合うと共通の結論や気づきに向かっていく。検索しても出てこないような気づきや学びに触れられるのは貴重でした」(北海道総合通信網株式会社/藤田さま)
「自社でもオフィスを刷新し、人が集う場のあり方を見直している渦中。クリエイションが生まれていくのは、こういう場からなのかもしれない、と感じました」(株式会社サンゲツ 人事部/岸さま)
「この本は何を言っているのか?は、この人はどんな人?という問いと似ている。本を読まなくなると、人を見られなくなるように感じた。書かれていないけれど確かにそこにあるものに思いを致すことが、本を読むときも人に接するときも同じく必要だと改めて思う」(聖学院中学校・高等学校 校長/伊藤さま)
丸善雄松堂の事業担当者であり「旬会ナビゲーター」でもある小窪さんも、「みなさん来たときよりもずっといい顔をされています。これも共読の力なのかな」と手応えを感じていました。
ほんのれん導入企業さまの声
こうした「共読」の力を、すでにほんのれんを導入されている企業のみなさまはどのように感じ、事業に活かしているのでしょうか。イベントの終盤では、食事を囲みながら導入への期待や手応え、活用のアドバイスなども交わされました。
「コロナ禍を経て、所属するグループは現在95%がリモートワークに。チームで仕事をする際、以前できていたことができなくなっている実感がありました。ほんのれん導入後、「旬会」には、グループ40人のうち30人近くが参加。回を重ねるごとに希望者が増えて、社員同士の横のつながりが生まれつつあります。今後はどう1000人規模まで増やしていけるかを考えたいです」(NTTコミュニケーションズ/山崎さま)
「導入して1年です。毎月届く本の目利きが素晴らしく、社内コミュニケーションツールとしてだけでなく、企画にも活かしたい思いで導入しました。化粧品を扱うには、アートのセンスが必要。一見、関わる事業と遠そうな本の中にこそ、センスを磨くヒントがビジネス書以上にあるように感じています」(株式会社 ポーラ 執行役員 TB事業企画担当/荘司さま)
「旬会のいいところは50分程度でできてしまうところ。部の会合で毎月開催しています。持ち出して読みたいという希望もあり、貸出制度も始めました」(株式会社 ポーラ TB営業企画部 人材育成チーム チームリーダー/土井さま)
⇒株式会社 ポーラさまの導入事例インタビューはこちら
「コンサルタントという職業は、本当に役に立つのか。常に自己批判をしながら向き合う中、上司に『コンサルに必要なことが詰まっているから』とほんのれんを紹介されたんです。問うという営み自体が、日本や社会を考えていく第一歩になると感じています。世界に対峙するうえで、こうした活動こそ大事だなと思います」(三菱UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社 イノベーション&インキュベーション部/細田さま)
全体のプログラムが終了した後も、会場内には業種や属性を超えて互いの問題意識や意見を交わす輪があちこちに広がっていました。
ほんのれんはこれからも、場に創発を促すコミュニケーション・ハブとして、問いと本の力を発信していきます。