POLAらしい「対人の感性」を育む土台として「ほんのれん」を活用したい。—株式会社 ポーラ【ほんのれん導入事例 no.2】
「最上のものを、一人ひとりにあったお手入れとともに、直接お手渡ししたい」。全国に約2800もの店舗を展開し、2万5000人のビューティーディレクターを要する、スキンケア・メークブランド、POLA。創業以来、接客・対話をブランドの価値にしています。
この強みをさらに育むべく、2023年6月、東京・五反田の本社ビル8階に「ほんのれん」を導入しました。8階は国内の販売事業を統括するTB(トータルビューティー)営業企画部のフロア。営業企画のフロアに「ほんのれん」を導入した意図は、どこにあるのでしょう? 背景や活用方法についてお話を伺いました。
[お話を伺った方]
執行役員 TB営業企画部 部長 荘司 祐子さん(写真左)
TB営業企画部 人材育成チーム チームリーダー 土井 直子さん(中央)
……全国のビューティーディレクターの育成、接客の品質向上にあたる。
TB営業企画部 事業戦略チーム チームリーダー 錦織 雅之さん(右)
……新規顧客との接点開発やビューティーディレクターのリクルートを担当。
POLAの「お手渡し」文化を支えるのは、対話の豊かさ
—荘司さんはTB(トータルビューティー)営業企画部のチームを束ねていらっしゃいますが、今回「ほんのれん」を導入された経緯を教えてください。
荘司さん:化粧品や美容サービスは、機能以上に感性的価値をお客様に感じていただくことが重要です。特にPOLAは「お手渡し」といって、創業以来、対面での接客を大事にしています。
TB営業企画部は、全国約2800以上のサロン、2万人以上のビューティーディレクターをまとめる部署として、POLAならではの「対人の感性」の育成を担っています。
対話の時間を豊かなものにするためには、決まりきったやりとりやロジカルシンキングだけでは足りません。接するお客様の日々の暮らしへの想像力や、その向こうにある社会のあらゆるものごとと化粧品事業をつなげて、新たな価値を生み出す創造力が必要です。
この力を育むには社内に活発な対話を生み出し続ける仕組みが必要だと感じていました。そんなとき、問いと本をきっかけに対話の場を醸成する「ほんのれん」のサービスを知り、導入を決めました。社員の「対人の感性」を刺激するツールとして、本は最適なツールなのではないかと思ったんです。
「営業にこそ、ほんのれんのような対話の仕組みが必要」と荘司さん。
—本社ビル内には、社員の方向けの本棚スペースがあります。そうした常設の本棚とは別に、「ほんのれん」に期待されたのはどんなことでしょうか。
荘司さん:継続的に知的な刺激を得られる「仕組み」になっているのが魅力的でした。
これまでも有志で本を使った社内ワークショップを開いてきたのですが、自分達でテーマを設定して、適切な本を選ぶのは大変でした。
ほんのれんは、毎月今考えたい「旬な問い」が届いて、その問いを考えるための5冊の「旬感本」もセットになっている。さらに思考を深めていくための「旬感ノート」というツールもあるので、視野を広げたり思考を動かすことを習慣化するにはもってこいの仕組みだと感じました。
対話を豊かにするために「問い」と「本」で視野を広げたい
—毎月更新の仕組みだからこそ、思考や対話の習慣化につながりますね。
土井さん:私が魅力に感じているのは、毎月本と一緒に届く「問い」です。
私のチームは全国の提携サロンの人材育成、接客の品質向上がミッションです。メンバーには現場で起きていることへの関心にとどまらず、出来事を俯瞰して社会の文脈でとらえる視点も鍛えてもらいたい、と思っています。お客様は何を求めているのか、その想像力を働かせるためには、一歩引いた大きな視点が必要だからです。
ほんのれんでは、毎月のテーマを深めるための問いが旬感ノートの中にまとめられています。例えば7月の「環境問題、何がモンダイ?」というテーマには「自分の仕事、どう環境問題とつながっていそう?」という問いがあったり。こうした問いをつかっていけば、チームメンバーとも目先の課題だけでなく、今の世の中の状況と自分達をつなげた、深い対話ができるかもしれないと思いました。
「お客様が求めているものに対してさらなる想像力をもつために、ほんのれんの“問い”が使えるのではないか」と土井さん。
錦織さん:「問い」があって、さらに「本」という「外の目」を借りると、いつもと違う思考を鍛えられますよね。
私は、ビジネスパートナーである提携サロンの新規開拓や、提携先での新規顧客獲得の戦略を考えるチームを見ています。土井さんと似た課題感ですが、目の前の問題解決のためのディスカッションばかりしていると、思考の枠が限られてしまいます。幅広い本と旬なテーマがセットになったほんのれんの仕組みを聞いて、ぜひ、と導入に賛同しました。
「ほんのれんを通じて、自分自身の思考力も鍛えていきたい」と錦織さん。
自力では出会えない本に触れて、思考が越境する
—本を介して議論することについて、どんなところに魅力を感じられていますか?
荘司さん:まずなにより、「ほんのれん」の本のラインナップに、「そうきたか!」と毎月驚いています。(笑)
編集工学研究所の選書はほんとうに秀逸です。旬感本の5冊は、テーマど真ん中のものもあれば、テーマからちょっと距離のある本もあって、この組み合わせの妙が対話を引き出すんです。
7月の旬感本。「『手塚治虫の森』をさっそく読みました」と土井さん。「『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか』を借りて帰りたい!」と荘司さん。
旬感ノートに載っている関連本も魅力的です。たとえば6月号のテーマは「場にはどんな力がある?」でしたが、旬感ノートには『アフォーダンス入門』(百考本の1冊)が関連本として載っていました。
出店戦略のヒントを求めて本屋さんに出向いたとしても、きっと自力では『アフォーダンス入門』には出会えません。意外な組み合わせの選書ですが、それでも読んでみると、ビジネス書には決して載っていない考え方のヒントが詰まっています。世の中って、こんなに自分の仕事に関係することが遠くに近くにたくさんあるんだと気づかせてくれる選書が毎回面白く、価値を感じています。
6月の「旬感ノート」BOOK QUESTのページには、「場にはどんな力がある?」を考える手すりとなる関連本36冊を紹介。
全国の拠点のメンバーも交え「ほんのれん」でワークショップを
—導入されて、社内の反響はいかがですか。
土井さん:まだ導入して1ヶ月ですが、意外だったのが、いつも寡黙に仕事をしているベテラン勢が、棚を設置するとすぐに集まってくれたことです。本に引きつけられて立ち寄ってくれるので、リアルの「場」があることの力を感じています。
「『火の鳥』はこの巻だけ持ってなかったんだ」と嬉しそうに本を手に取るスタッフもいましたね。手に取る本で、その人の興味関心がわかり、個人が個人として見えてくるように思います。
毎月届く本やツールの設置を担当するのは、土井さんと錦織さん。「自分で本を入れ替えると、場に愛着も湧いてきます。さらに仲間を募って、一緒に棚を育てていきたいですね。貸出もしたいと思っています」。
—さっそく対話が生まれはじめているんですね。今後試したい活用方法などありますか。
錦織さん:ほんのれんを使ったワークショップを実施予定です。在宅勤務のスタッフもいるので、リアル・オンライン合同で開催します。遠方のメンバーもいるのですが、画面越しに旬感ノートを使いながら、問いを一緒に考えたり、ディスカッションができそうです。
荘司さん:私はぜひ、他の企業さんとも一緒にワークショップをやってみたいです。本という乗り物があれば、企業の垣根を越えて対話の波に乗っていけると思います。関心テーマ、企業文化も全く違う者同士だからこそ、自分たちの視野の枠にも気づけるでしょうし、思いがけない対話が生まれるのではないかと期待しています。
本好きのスタッフも交えての対話。手に取る本でその人の興味がわかり、普段にない会話が生まれています。